虚淵玄について

 虚淵玄ノワールというか、暗い話と展開で異彩を放っているように見えるが、実はその話自体は王道だ。PHANTOMは「レオン」+「不夜城」とか言われていたし、ヴェドゴニア仮面ライダー+吸血鬼だ。秀才肌であり、PHANTOMを書く際には全く興味のなかったフェラーリについて社長から書くことを強制され、勉強の末にアレだけの描写をした。
 虚淵の作風は先人をリスペクトした王道であるので結構簡単に展開は読める。PHANTOMなんか開始5分で「名づけ」がポイントになるんだろうーなー、と読めた。だからといってつまらないわけではなく、私の中で最高の作品であるのだから、虚淵玄の先人の作品を咀嚼し、再構成する能力というのは素晴らしい物がある。まあ、その分ウェルメイドだとか言われたりするし、誰もが驚く個性とかオリジナリティとかはない。けれど、この作者なら安心、という安定感は本当に素晴らしい。