コードギアスについて、覚え書き

 コードギアス一期においてルルーシュとスザクはまさに好対照を成しており、その二人の性格の違いがストーリーのダイナミズムを生み出していた。「善を知りて悪を為す者、悪を知りて善を為す者」というコピーは素晴らしいものであり、この二人はまさにダブル主人公といってよかったと思う。
 
 しかし二期においてはスザクがその輝きを失ってしまう。それは本人が否定していたはずの「間違った手段によって得た結果」を肯定していたせいだろう。スザクは皇帝にルルーシュを差し出してナイトオブセブンの地位を得る。それによってユフィの死の真相は隠され、アッシュフォード学園の生徒達は皇帝のギアスにより偽りの記憶を植え付けられてしまう。これを正しい手段とは流石に言えないだろう。

 そのためスザクは内面の規範を失い、「ウザイんだけど正しいことを言っているキャラ」というアイデンティティを失ってしまう。そのためスザクは当初「ナイトオブワンになって日本を救う」という建前を掲げている。要するに内面の正しさを失ってしまったため、外面だけでも救うという目標に切り替わっているので、これは明らかに一期から変質している(それでも手段の正しさを捨てきれないので百万のゼロを見逃したりカレンに薬を打つのをやめたりするのだが…)。おかげで二期の当初のスザクは「単にウザイだけ」のヤツになってしまった。私は一期のスザクは割と好きなのだが二期のヤツはダメだ。

 さらにフレイヤによる虐殺によって「外面だけでも日本を救う」という目標すら崩壊してしまう。あの時点でスザクは「何も無いヤツ」にまでなってしまったのだった。そこからルルーシュのゼロ・レクイエムに賛同し、ナイトオブゼロになってからはとたんに輝いているのは、要するに何もなくなったスザクがアイデンティティを再定義されたおかげだろう。

 ゼロ・レクイエムによってルルーシュは悪として断罪され、スザクは名前と自分自身を失ってゼロとして生きていかねばならない。これはそれぞれ彼らにふさわしい罰であって納得のいく落とし所であったと思う。